作品に生きた言葉を聴く


今日は朝から心がざわめいている。


落ち着かせようと、丁寧にコーヒーを淹れるがそれでも。多分に昨日の時間があまりにも「豊か」だったからか。


ラッヘンマン作曲「Got Lost」というソプラノとピアノのための30分に渡る大作。ヨーロッパではいろいろと演奏されているが、日本ではまだほとんど知られていない。現代曲が日本の土壌で育っていく難しさは、僕自身も普段の演奏活動から身をもって体験している。日本での「アートの在り方」それはすなわちこの「社会」に生きる「人の心の在り方」に直結しているのでは、と。


都内某所、スタインウェイを所有されている画家のご自宅を借りて、ラッヘンマン夫人である菅原幸子さんから直々に教えを頂いた。「Got Lost」は世界で彼女がもっとも多く演奏している。様々な国の演奏家と。


こんな貴重な経験があろうか。当初は僕がドイツに行ってレッスンを受けようともしてた。それほど素晴らしい作品だし「学べるなら何でもする」という気持ち、それしかない。


作曲家の初演をするのは何度か経験があるが、これは本当に貴重な体験。作曲した本人自らその作品について学べるから。ベートーヴェンの演奏を聴いてみたい、ベートーヴェンから作品を、音楽を学びたい。もちろん無理なことだけど、作品に触れていると本気でそれを思ってしまう。チェルニーが羨ましい。


今年の5月に滋賀県は大津にある「びわ湖ホール」で、世界的指揮者でありびわ湖ホール芸術監督でもある沼尻竜典氏が総合プロデュースする「近江の春 びわ湖クラシック音楽祭2018」が催される。沼尻さんとは2011年に東京文化会館で行われた「フランツ・リストと同時代の巨匠たち~リスト生誕200年記念」でリストの死の舞踏を共演させていただいた以来。


音楽祭プログラム(出演者、日時など)
https://bc2018.biwako-hall.or.jp/pdf/bc2018.pdf


この音楽祭でシュツットガルト州立歌劇場の専属歌手として世界的に活躍しているソプラノ歌手角田祐子さんと「Got Lost」を共演させていただく。彼女との共演はアルバン・ベルクの「ルル」以来。ラッヘンマンご夫妻から絶大なる信頼を置かれている角田さん。彼女は菅原さんと共に「Got Lost」を世界で最も数多く演奏している。


要するにこの大作を最も知り尽くしているお二人から「Got Lost」を経験できることの価値。これは震えるほどのもの。


昨日の時間の後、菅原さんと「現代曲や日本の音楽教育」について語った時間も強烈に印象的に残っている。


心のざわめきが落ち着かないわけです。

ひらめき


最近知った「逍遥学派(しょうようがくは)」。


「逍遥(散歩)しながら講義したこと」が由来とか。ペリパトス派とも。


なるほど…


僕は散歩するさい、これといって深いことは考えず、その通り過ぎる瞬間を味わいながらぶらぶらと歩いているだけ。しかし、頭が飽和状態だったり、何かしらアイデアが必要だったり、音楽的表現を模索したり、人生に迷ったり…そんな時いつも少しだけ一歩前に導いてくれるきっかけは「散歩」だったかなぁ。


ドイツに住んでいたころ、先生はよくレッスンの途中に僕を散歩に連れ出してくれた。歩きながら世間話をしたり、何も話さなかったり。けど、時々「life」について語り合ったり。


その影響もあるのか(確実にありますね)、僕も学生とたまに散歩する。何も期待しないで、シンプルにその時間を共有する。講義を学生たちと大学構内を歩きながら過ごすことも。


「何も考えないで」というのも、円の如くぐるりと回れば「考えている」ことなのかもしれない。


「見てない」けど「見てる」のかもしれない。


「何もない」けど「全てある」のかもしれない。


散歩している間、物事に対し思考や感情がどのように渦巻いて機能しているか想像もつかないけれど、新たな発見や気づきが「散歩」をきっかけに生まれてくることは多い。


子供との登園は僕にとっても大切な時間なのです。

静岡で音楽を


先日の静岡でのレッスンは素晴らしかった。


ショパン、ドビュッシー、ベートーヴェン。T先生門下の小学生や大学生、そしてT先生も一緒に創った音楽の時間。素晴らしい演奏と学びへの姿勢に感動です。


もし僕の経験が少しでも皆様のお役に立てるのであれば、この形が全国に広まることを静かに願いつつ…


ピアノは孤独な作業が多い。だからこそ皆で創造過程をシェアしたい。そこに湧き出てくる様々なアイデアや思考が交差し新たな気づきが生まれる。それはまるで室内楽のリハーサルの様。


以前、広島での室内楽コンサート。その時に何度も重ねた「非常に」有意義だったリハーサルの時間を思い出す。決して忘れることのない印象的な時間。


それをピアノのレッスンで活かしたい。僕の中に潜む強い思い。


教育に対し、とても柔軟で広い視野を、そして情熱を抱いているT先生。話題も尽きることなく、素敵な時間はあっという間に過ぎていきますね。


その日は友人宅に家族でお世話になり、両家族の温かな交流に心が和みます。


たくさんの気持ちを込めて、ありがとう。再会を約束。



翌日はPTNAステップのアドヴァイザーで数々の素晴らしい演奏を拝聴。講評には「次につながる問題提起」を。自身の音楽を見つけてほしい願いを込めて。



最終日、沼津港。漁師の方は話してて気持ちいいです。食事も美味しく千本浜も富士山も立派で美しい。


壮大な海、色、風、におい、音、冷たさ…


五感を通して僕の体に入ってくるもの全てが一音の打鍵に集約される。


経験は消えない、永遠に蓄積されていく。

「TEDxTitech2018」日程変更のご報告

末永が登壇させていただく「TEDxTitech2018」は5/13に変更となりました。


https://tedxtitech.org/


テーマ「Get Interdisciplinary」についての解説も大変興味深い。各登壇者も発表されています。


是非ご覧ください!

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挑戦

家族が寝静まっている今、先日同様グリュミオーのバッハを聴いています。


今日は所沢市立松井公民館でリサイタルでした。1990年4月以降今日まで毎月開催されているコンサートシリーズ。もちろん名前は知っていたので、このシリーズに出れることは所沢市民としても格別な思い。



プログラムの変更は多少あり、トークを含め2時間、温もり溢れる時間。満席のお客様にも恵まれ、これまで28年間続けてこられた企画の底力を感じます。公民館のホールはとても立派。ピアノは小柄のヤマハG3。Gシリーズのファンも多いのでは?僕もその一人ですが、このヤマハG3は本当に素敵だった。特に「角がなく"含み"ある弱音」が個人的には印象的で、演奏しながら様々なアイデアが生まれてきました。


そう、僕自身が日々変わっていくように、演奏も変わっていく…


今回はこれまで何度も演奏しているプログラム。練習では「新たな表現」を模索し続けました。その時間は正に「自分との闘い」。頭や心が爆発するような苦しさでしたが、心と繋がる瞬間、これまでの苦しみから解き放たれる自由な感覚が。そのような意味で今日のリサイタルは挑戦の連続。演奏だけでなく「心の在り方」も然り。様々なことを試みたこのコンサート。僕にとって本当に大きな経験となりました。全ての関係者に心から感謝申し上げます。


コンサート後のレッスンで生徒がショパンとベートーヴェンを。別の生徒からは、メールでバッハの楽譜の見方についての気づきが。


みんな少しずつ変化している。自分を強く信じて。


明日は静岡。音楽で繋がっていくことに感謝です。