気持ちが冷めない

以前の記事で西荻窪にある音楽カフェ「TOPOS」について載せた。数日経った今も気持ちが冷めないので、その事についてもう少し詳しく書こうと思う。

何よりもまず伝えたいのは、店内に居た人達の表情だ。とても良い、豊かな幸せに満ちた表情を浮かべていた。そこには看板犬である黒のラブラドールがいるはずだった。僕が訪れた時は残念ながらすでに亡くなっていた。TOPOSのお母さんは「いまだにホームページに載っている写真を変える事が出来ない」と目を下に向けつつも少しだけ温かい表情で語っていた。

TOPOSには1台のグランドピアノがある。1960年代BECHSTEIN(ベヒシュタイン)、ドイツ生まれ世界3大メーカーの1つだ。名器と謳われているが、実際に間近で聴き弾いてみるとその由縁を理解する。

温かくふくよかな音色、クリアな音の交わり、瑞々しく生命力に満ちた豊かなハーモニー、何処までも遠くまで続く美しい小道の様な音の伸び、どんなに静かに弾いても命の灯火が消える事のない弱音、壮大なオーケストラの様な響き…言い出したら切りがないがとにかく魅力に溢れている。

月に1日だけ「ピアノの日」というのが設けられている。お客さんはそのピアノを好きな時に好きな曲を好きなように演奏できる。もちろん他のお客さんも店内にいて食事をしたり珈琲を飲んだり静かに世間話をしている。

けれどそれは決して分離された空間ではなく、各々が好きな事をしているんだけど、ピアノの音色、作品を楽しみながら時を過ごしている。皆でその空間を創っている。その雰囲気は居心地が良く誰かの家のリビングの様な感じだ。優しくピアノの音色が包み込む。

僕も友人に誘われ初めて伺ったが、そこの空間に直ぐに魅了された。みんな順番にピアノを弾いている。自由な気持ちで。心を裸にして。

「ピアニストの末永さんです」と紹介された。普段よく見るのが「プロのピアニストの前で恐れ多くて弾けない」とか「ましてやクラシック以外なんて」とか、まぁ色々だ。しかしここではそんな気持ちは微塵も見せず極々自然体で受け入れてくれた。みんなは黙々とピアノを楽しみ、周りは味わっている。僕は「なんて素敵な空間なんだろう、なんて気持ちがいい人達なんだろう」と思いつつその空間に身を委ねていた。

演歌を弾く人もいればポップスを弾く人もいる、クラシックが演奏されビートルズを演奏する。

みんなピアノが好きで、音楽が好きで楽しみたい、その一心なんだ。僕は何となく嫉妬さえ感じてしまった。羨ましい。こんな気持ちが集う場所があるなんて。

僕もその順番に混じり、ブラームス、シューマン、ドビュッシーを演奏した。目を閉じ体全体で音楽を感じている人もいれば、食事をしている人もいる。

またTOPOSに行きたい。そこには音楽を味わう「心の原点」があるように感じた。

0 件のコメント:

コメントを投稿