先日・工房・イベント・音律・楽器・・・広がる輪

Beethoven Klaviersonate Nr.8 Op.13 第2楽章
自分が思っていた以上に疲れていたのだろうか。レクチャーコンサートの翌日、起床時から頭がボーっとしてそれが一日消えることはなかった。なんとかスケジュール等の作業を進めたが、メールや電話の後で変な事を話したり書いたりしてはいなかったか気にしたり・・・。

レクチャーコンサート開始!
6年前から少しずつ続けているピアノ工房でのレクチャーコンサート。どんな時も信念を持ってテーマに取り組み、少しでも"それ"を周りに伝えたく続けてきました。 心が折れそうになる事も幾度とあったけれど、直感的に「この企画は絶対(啓蒙的に)必要であり、発信すべきだ」と感じていました。もはや「使命感」のようなものです。力強いその気持ちに支えられ、突き動かされてきた、と言えるでしょう。その気持ちは消えることなく今でも心に留まっています。

先日行われた第8回ピアノ工房レクチャーコンサート。その中で新たに企画された「音律シリーズ」。今回はシリーズ第3回目を迎え「古典調律の一つ、キルンベルガーⅢを使用しベートーヴェンのソナタの響きを体感」しました。第1回はモーツァルトを、第2回はバッハ、そして今回第3回はベートーヴェンとあって、気持も一層高まり「とうとう来たか」という感じに。

※資料提供でとてもお世話になっているピアノ調律師「岡本芳雄」さんのサイト。古典調律について詳しく載っています。

【鍵盤楽器の為の十二音相環図】
http://pianotuning.jp/

このイベントは、史実を追い求めることが目的ではありません。しかし、適当にしているわけでもありません。工房コンサートメンバー全員で様々な文献を調べ、何度も議論し、フォルテピアノやモダンピアノ(時にはチェンバロも)など使用し実際にその響きの中で検証に検証を重ね「勉強」しています。その上でテーマ「作曲家と調律法」が決まります。そしてようやく「今回はこのポイントに絞り、このようなアプローチで発信しよう」と決まるわけです。この企画の最終的な目標は「それらの体験からどのような音楽的表現のヒント、または可能性を得れるか、そして普段我々の最も身近にある"平均律"と"モダンピアノ"でどのようにそれを表現するか」なのです。 歴史の中に(その当時)実在し使用されていた調律法でその響きを体感すると言うのはとても意味のある試みだと思っています。

今回もまた前回に引き続き「大きなヒント」を得ることができました。ベートーヴェンのピアノソナタより3曲(悲愴、ワルトシュタイン、テレーゼ)を抜粋し、その一部を使用し音律サイドからその響きの世界を覗くと強烈な印象を受けます。

音律、と言えば「古楽の世界」という(普段モダンピアノを弾いている方々から)一般的にはそのようなレッテルを張られがちですが、我々はそうは思っていません。そして思っていない方々も多くいらっしゃるのだ、とこのイベントを続けることによって強く感じました。そのような方々と出会えることに大きな喜びを隠せません。

根本的なところでは「古楽なのかそうでないのか」というカテゴリーはあまり深い意味を成しません。音楽という同じ「フィールド」で、そして音楽史という同じ「線上」にいるのです。その繋がりの重要性を知れば知るほど音律の事も無視できなくなります。同時に、音律を知れば知るほど音律だけでは語ることができなくなってくる「音楽的な様々な事」も痛感します。その中の一つが「楽器」についてです。

・・・本当に我々は「ピアノ」という楽器を知っているのでしょうか?

偉大な音楽作品の世界の深部を覗こうとすると、あらゆることの関係性が「有機的」であると実感します。1つのサイドから語り続けると必ず壁にぶつかり進めなくなります。となると別の方向からアプローチしなくてはならない。それを続けて行くと「必要ない事なんてないのでは」と思うほど様々な事を知らなくてはならなくなってくる。「(構造だけでなく、鍵盤楽器が変化していく歴史の中の過程も含めた)楽器学」は語られるべくして語る必須項目の一つなのです。

知れば知るほど、知らないことが増え、解らないことが増えれば増えるほど、興味が湧く・・・その連続です。

音律について講義中の加藤さん
これまでのレクチャーコンサートでは、時に全くと言っていいほどお客様に恵まれなかったこともありました。勿論その可能性は今もあります。しかし、続けて行くことによって少しずつですが拡がりを見せています。お陰さまで先日のイベントは超満員の中行うことができました。決して大きなイベントではないけれど、来て頂いているお客様とは、通常のコンサートとは何となく違う種類の身近さと太く温かい関係性が構築されて来ている、と勝手ながら感じています。

3時間を超えるレクチャーコンサート。休憩中も多くのお客様が熱い質問を、いくつも投げかけて下さいました。その中には時として我々も答えられないこともあります。しかし、だからこそ嬉しくて楽しい。それこそ「成長のチャンス」です。次までには勉強しておきます。皆様と一緒に成長していく。レクチャーという名は付くけれど「教えている」という感覚は正直全くなくて、検証によって得た様々な有益な音楽的ヒントを披露し、イベントが進行している途中さえも新たな発見があり、お客様からの多くの疑問やアイデアなども交差し、気付けば互いに成長し合っている、そんな時間です。そんな時間であってほしい・・・!皆さんと一緒に変わっていく工房レクチャーコンサート。半学半教。

試弾
レクチャー終了後も多くのお客様がその場に残り、今回使用した3つの鍵盤楽器①「Dulcken(フォルテピアノ1815年レプリカ)ミーントーン」②「C.BechsteinC91(モダンピアノ)キルンベルガーⅢ」③「C.BechsteinD282(モダンピアノ)平均律」を楽しそうに試弾されていました。やはり聴くだけでなく、直接弾くことによって音と自身の体を直結させなければ、その素晴らしさを理解することはできないでしょう。楽器の素晴らしさは触ってみなければわからない。

対談
また、先日芸劇で演奏したベートーヴェン皇帝のテーマでの対談が急遽組まれました。 色々と言葉を交わせて頂きました。終わったコンサートについて語ることは普段滅多にありません。ある意味する必要はありません。しかし、普段耳にするのとは違うメーカーを使用すること、この意味は我々が思っている以上に大きい、と言えます。日本という土壌だからこそ。ただ「メーカー変わったのね」で終わってしまえばそこまでです。しかし、長い音楽の歴史をふまえ「多様性に満ちた」音楽のさらなる魅力的な色彩に静かに耳を澄ますと、今まで聴こえなかったものが聴こえてくるものです。人の耳と心はそれを深く感じる事が出来るのです。楽器メーカーが変わると言うのは想像以上に深い意味があり、想像以上に豊かな音楽的一面を提示してくれます。

よって、今回このような場を提案頂きとても感謝しています。ベヒシュタインピアノを使ってのコンチェルトは(スタインウェイのタッチや響きに慣れていたので)演奏しながらも全く今までになかった感覚を抱き、響きにも新たな発見があり「驚きと喜び」を隠せませんでした。弾いてる本人がそう感じているから、聴いていた方々はそれ以上に「様々な感覚」を得られたかと思います。個人的には、3度目となった"自分の中のベートーヴェン皇帝"に「新しい皇帝の一枚」が追加されたと感じています。スタインウェイの時と感覚が全く違う。さらに言えば、スタインウェイ以外のピアノでコンチェルトを演奏できることは(僕の中では)無かったので、そういう意味においても決して消える事のない、音楽的にも貴重な「経験」であったと言えます。ザウターとかベーゼンとかでの皇帝はどんな響きがするのでしょうか・・・。

そして最後にCBechsteinC91(キルンベルガーⅢ)でオケパートを、C.BechsteinD282(平均律)をピアノソロパートで皇帝の2楽章を演奏し全行程を終えました。キルンベルガーのオケと平均律のピアノソロ、これも一興。素晴らしい響きのグラデーションと立体感です。絶妙に合うので是非お試しあれ。

レクチャー中の様子
次回の工房レクチャーコンサートは5月31日(日)に予定されています。音律シリーズ第4回で、これをもってシリーズ最終回となります。テーマはもちろん「平均律」、注目する作曲家は「ドビュッシー」。先日のイベントでは既に多くのお客様がその場で予約されていました。詳細は追ってFacebook、Twitter、Blog、各ウェブサイトなどで発信しますが、それを待ちきれないという方はユーロピアノ㈱、またはスエナガはじめ工房コンサートメンバーに気軽にお問い合わせ下さい。

長くなりましたが、最後にあと少し・・・

後日、多方面から大変多くの反響を頂きました。手作り感満載のイベントですが、皆様のご期待に応えられるよう今後も精一杯頑張っていきたいと思います。引き続き応援よろしくお願い致します!

音楽は本当に魅力的で面白いです。苦しさを含む大きな喜びと感動がそこに存在し、明日への活力、生きる力を与えてくれます。「今生きているんだ」と強く感じます。常に変化し続け、演奏者の人生をそのまま映し出す鏡である「音楽」というもの。その一瞬にしか存在しない音を、皆様と再度共感共有できればと願っています。

お客様はじめ全ての関係者の皆様に心から感謝申し上げます。ありがとうございました。

P.S.打ち上げ時の写真を・・・メンバーの一人、ピアニストの稲岡さんがいない!ごめんねチカちゃん。
調律師の加藤さん、素敵な笑顔です!


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